スピーカー特性① 非線形歪み
スピーカーはアナログ電気信号をコイルに流すことで磁気を発生させ振動板を動かす。振動板により空気を振動させ音圧を生み出す。
以下、スピーカーへの信号入力からコイルまでを電気系、コイルから振動板までを機械系、振動板から空気を音響系とする。
この時、コイルは電気系→機械系の、振動板は機械系→音響系の変換器と見ることが出来る。
スピーカーは3つの系を用いたアナログ機構のため歪みが発生する。この歪みは線形ひずみと非線形歪みに分けることが出来る。以下非線形歪みについて述べる。
非線形歪みには主に「高調波歪み」「相互変調波歪み」の2種類がある。
高調波歪みは入力信号に含まれる周波数成分の整数倍の成分である。相互変調波歪みは入力信号に含まれる2つ以上の周波数成分の和及び差の成分である。
簡易的な発生のメカニズムをいかに示す。
入力信号u(n) = cos(f1) + cos(f2) f1,f2:周波数 f1>f2
出力信号y(n) = u(n)^2
とすると
となる。
第1項第4項に高調波歪みが、第2項第3項に相互変調歪みがみられる。 この場合、入力信号が全て歪みに変換されてしまったと捉えられる。
このスピーカーから出る歪みが音質に影響を与える。特に音量を上げた場合に非線形歪みは大きく発生することが知られている。(具体例に関しては省略)
もちろん周波数成分の大きさが大きくなれば歪みも大きく現れる。
実際の入力信号、特に音楽信号には無数の周波数成分が含まれており、これらはボーカル、ドラム、ギター、シンセなど様々な楽器から発した音の周波数成分が混ざり合っている。
この内ある楽器ないしボーカルの発した音は、最も大きな周波数成分である基音と呼ばれる音とその整数倍付近に発生する倍音が含まれる。
倍音は高調波成分と似た成分であることが考えられる(音の周波数のみに着目した場合)ので、聴覚上大きく歪みとして感知されるのは相互変調波歪みのほうなのではないかと考えられる。(要検証)
逆にf1がf2の整数倍の周波数だった場合、相互変調波歪は高調波歪みと等しく聞こえる。
DTMのイコライジングで基音とその整数倍の周波数成分をQを高くして強調することで聞こえが良くなることには、このことが理由の一つとして関係しているのと考えられる。
余談だが、この非線形歪みを取り除くことが自分のこれからの研究になる見込みである。